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S&P、ユーロ圏9カ国を格下げ 仏・オーストリア「トリプルA」失う 2012年01月14日

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK808010720120114

[ニューヨーク 13日 ロイター] スタンダード&プアーズ(S&P)は13日、ユーロ圏9カ国の格付けを引き下げ、フランスやオーストリアが最上級の「トリプルA」格付けを失った。一方、ドイツはトリプルAを維持した。

 フランス、オーストリア、マルタ、スロバキア、スロベニアの5カ国が1段階の引き下げとなり、ポルトガル、イタリア、スペイン、キプロスの4カ国は2段階の引き下げとなった。

 また、その他7カ国の格付けを再確認するとともに、当該16カ国のうちドイツ、スロバキアを除くすべての格付け見通しを「ネガティブ」とした。


 S&Pは、ユーロ圏の債務危機対策が不十分だと指摘。加盟国の経済競争力に歴然とした差があるという大きな問題が見過ごされているとし、「このため、財政健全化のみを柱とする改革は自滅的なものになりかねない。消費者の間で雇用と可処分所得に対する懸念が強まり、内需が減少し、税収の落ち込みにつながる」との見方を示した。

 欧州中央銀行(ECB)が緊急流動性対策を通じて市場の信認維持を図っていることは評価したものの、政府の対応については、「ユーロ圏において継続中のシステム上の緊張に完全に対処する上で不十分な可能性がある」と指摘。信用状況ひっ迫や種々のユーロ圏債券発行体に対する金利コスト上昇、経済成長の弱まりなどがユーロ圏を取り巻く緊張として挙げられると述べた。

 昨年12月9日の欧州連合(EU)首脳会議ではユーロ圏の経済統合強化に向けた新条約の草案策定に関して合意したものの、債務危機に歯止めをかけるべく一段と強力な措置が打ち出されるかどうかは依然不透明となっている。

 


 <EFSFへの影響>


 今回の格下げにより、ユーロ圏の借り入れコストは全般的に上昇する可能性が高いことから、債務問題はさらに深刻化しかねないとの懸念が根強い。

 また今後、欧州の大手銀行や企業、政府系機関が相次いで格下げされる恐れもある。このなかにはトリプルA格付けを持つ欧州金融安定ファシリティー(EFSF)も含まれるが、EFSFが格下げされることになれば、基金の借り入れコスト上昇や重債務国に対する支援能力の低下を招きかねない。

 S&Pソブリン格付け委員会のジョン・チェンバース委員長はロイターとのインタビューで、EFSFがトリプルAを維持するには、ドイツなど残されたAAA格の国がEFSFへのコミットメントを強化する必要があるとの見方を示した。

 同氏はCNBCテレビに対し、ドイツの格付けに対する主なリスクは、財政状況や金融セクターの問題の悪化だとの認識を示した。


 こうしたなか、ユーロ圏財務相は格下げを受け声明を発表し、ユーロ圏として財政規律強化に向けた新条約の合意に近づいており、救済基金の格付けを「トリプルA」に維持するべく全力を尽くすとの見解を示した。

 

 バンク・オブ・ニューヨーク・メロンのシニア為替ストラテジスト、マイケル・ウルフォーク氏は「欧州は今後も困難な状況が続く見通しだ」とした上で「ユーロ圏が将来的に政治的に統合されるのか、それとも経済的な統合にとどまるのかを含め、欧州首脳が決定を行う上で政治的支持が得られたと確信するまで、さらなる格下げや金利上昇の動きが予想される」との見方を示した。

 

 <フランスの格下げを最上級から引き下げ、ドイツより1段階下に>

 

 S&Pは、フランスの長期ソブリン信用格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げた。最上級に据え置かれたドイツより1段階低くなったことは、3カ月後に大統領選を控えたサルコジ大統領に打撃だ。

 S&Pは今回、フランスの短期ソブリン信用格付けの「A─1+」は据え置いた。またこれに伴い2011年12月5日に行ったフランスを格下げ方向で見直すクレジットウォッチへの指定を解除した。

 ただ長期ソブリン格付けの見通しは「ネガティブ」。これは、一定の条件下で2012年か13年に再び格付けを引き下げる可能性が少なくとも3分の1あることを示す。


 格下げを通知されたバロワン経済・財政・産業相は、サルコジ大統領や閣僚と緊急協議。また、S&Pが正式に発表する前に、テレビのニュース番組に出演し、格下げの影響を抑えようと努めた。

 バロワン経済相はフランス2テレビで、「1段階の格下げだ」と発言。S&Pは、ユーロ圏債務危機の一因であるガバナンスの問題で一部の圏内諸国を格下げしたと指摘した。

 さらに「明らかにこれは惨事ではない。言ってみれば、長い間、20点中20点の満点を取り続けている学生に19点をとったら惨事か、と問うようなものだ」と語った。


 S&Pは、フランスの格付けが引き続き、豊かで多様かつ耐久力のある経済、高度な技能と生産性を持つ労働力を反映するとしながらも、その強みが相対的に高い政府債務や労働市場の硬直性に一部打ち消されていると指摘した。

その上で、長期格付け見通しをネガティブにしたとし、フランス政府が財政再建計画から外れた場合や、ユーロ圏で資金調達・経済のリスクが高まり、その結果、偶発的債務が大幅に増加したり資金調達環境が著しく悪化した場合、再度格付けを引き下げる可能性があると警告した。


 フランスの格下げは、市場で以前から織り込まれており、エコノミストは政府の資金調達コストへの影響は限定的と予想するが、大統領選で再選を目指すサルコジ大統領にとって、このタイミングは最悪とみている。

 仏投資ファンドLutetia Capitalを率いるFabrice Seiman氏は「S&Pの措置は全く正しい。フランスは30年にわたる政府財政の無責任な運営に対する代償を払っている」とロイターに語った。


 野党各党からは一斉にサルコジ大統領の経済運営能力欠如を指摘する声があがった。

 大統領選でサルコジ大統領の筆頭対抗馬である最大野党・社会党のオランド前第1書記の側近はツィッターで「格下げはサルコジ政権が5年にわたり社会、経済、政治を地盤沈下させてきたことへの制裁だ」と指摘。

 大統領選に立候補している中道派のフランソワ・バイル氏はテレビ番組で「わが国の評価に悪影響を及ぼす国家主権の格下げであり、ドイツと比較した格下げでもある。欧州におけるわれわれの状況は象徴的にも政治的にも悪化することになる」と語った。