IMF金融安定報告:銀行への政府支援継続が必要-資本不足解消せず 2010年10月06日
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=axAO88hA1AtE
10月5日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)は、「緊急の資金調達圧力」が迫り来るなか、金融リスクはこの半年間強まってきており、各国政府は一部金融機関の資本増強や再編に備える必要があると指摘した。
IMFは5日公表した世界金融安定報告(GSFR)で、世界の銀行資産の評価損推定額を4.3%引き下げる一方で、欧州債務危機によって金融セクターとソブリンリスクの関連性が浮き彫りになった後も、同セクターへの信頼感はまだ完全に回復していないと警鐘を鳴らした。また、向こう2年間で約4兆ドル(約335兆円)の銀行債務が借り換え時期を迎えることから、資金調達市場の正常化を支援するため、財務基盤の弱い金融機関を保護することが「優先課題」になっていると分析した。
同報告は「世界金融システムは依然極めて不確実な時期にあり、引き続き景気回復のアキレスけんとなっている」とした上で、「情勢は依然脆弱(ぜいじゃく)なことから、この数年間続けられた銀行への公的支援は継続せざるを得ないだろう」と指摘した。
IMFは、ギリシャに端を発したソブリン債危機への欧州当局者らの「強力な対応」と、欧州銀のストレステスト(健全性審査)結果公表については、政府と銀行の資金調達に寄与したと評価する一方で、一部の国が財政赤字削減に努めている最中でも、投資家は依然公的債務の負担に注目しており、ソブリンリスクは引き続き高水準にあると推定した。
出口戦略は先延ばし必要か
その上でIMFは、一段と「力強い」経済状況になるまで「異例の」金融・財政政策からの出口戦略は先延ばしする必要があるかもしれないと指摘した。
同報告によれば、銀行が保有する貸し出し債権と証券の評価額は2007年以降2兆2000億ドル減少した。4月時点では2兆3000億ドルと推定されていた。
IMFは、欧州銀が日常業務において銀行間融資や債券市場、中銀信用枠への依存度が米銀よりも高いことから、「資金調達ショック」に対してより脆弱だと分析。「経済が予定通り回復し、ソブリン債と銀行の資金調達をめぐる緊張状態が引き続き緩和した場合、欧州銀は財務が改善し、徐々に資本バッファー(信用収縮時などに緩衝役を果たす資本)を再構築するはずだ」とする一方で、「しかし、欧州銀は緊張状態の再発に対しては今後も脆弱のままだろう」と指摘した。
また、欧州の「一部の国」の銀行が資金調達市場を引き続き活用するためには、追加の資本増強や資本の質向上が必要になる可能性があると述べた。
存続不可能な金融機関は解体を
その上で同報告書は、ドイツとスペインの銀行に言及し、存続できない金融機関は解体する必要があり、既に公表された再編計画は「厳格」に実施される必要があるとした。
米国については、「銀行はかなりの資本を調達できており、予想される需要は対処可能とみられるが、最近のデレバレッジ(借り入れ依存の解消)傾向を逆転させ、米金融規制改革に今後応じるためには、追加資本調達が必要となる可能性がある」と分析した。また、「米不動産セクターは二番底に陥りやすい」として、米金融システムには「一部に弱い部分」があると指摘。「特に住宅・商業用不動産の見通しが不透明なようだ」とした。
日本に関しては、短期的には国債市場が混乱に陥る公算は小さいとみられるが、銀行の「自己資本比率は低く収益性は弱い」と分析した。
これとは対照的に、新興市場は「先進国経済のソブリン債や金融の危機的状況に対して非常に回復力があることを示した」と述べた。
その上で、IMFは「世界の金融システム情勢は現在、健全な状態からいきなり危機状態へと悪化する潜在的可能性を持っている」と指摘し、「こうした背景の下、政策当局者は、金融システムを強化し、『大き過ぎてつぶせない』金融機関に対処し、偶発債務を減らし、確かな財政改善への道をたどらせる良い機会を逃してはならない」と呼び掛けた。
