追加緩和効果は短命に、新たな領域に踏み出すか岐路に立つ日銀 2010年09月01日
2010年 09月 1日 19:27 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17047920100901
[東京 1日 ロイター] 日銀は8月30日の臨時金融政策決定会合で追加金融緩和に踏み切ったが、足元の市場は緩和決定前より円高が進行するなど効果は短命なものとなった。
米国経済の先行きを展望した場合、円高圧力が継続する可能性が高く、日銀は、今後も円高が進むたびに効果の薄い従来型の緩和を繰り出していくのか、これまでの枠を超えた新たな領域に踏み込んでいくか、岐路に立たされている。
<円高圧力、長期化も>
最近の為替や株価の不安定な動きは「米国経済の先行きを巡る不確実性がこれまで以上に高まっている」ことが影響しているというのが日銀の見立てだ。米国のバランスシート調整についても、「日本を例にみると、大きな信用バブルが崩壊した後の経済の回復は時間がかかる」(白川方明総裁、30日会見)としており、日本がバブル崩壊の処理に追われた1990年代と同様にかなりの時間を要するとみている。さらに、インフレ期待の低下も指摘されており、実質金利が下がりづらい状況の中で「米国が日本型デフレに陥る可能性がある」(幹部)ことにも警戒感を隠さない。
足元の円高の要因として、市場では日米金利差の縮小観測が指摘されているが、金利低下余地がほとんどない日本に対し、相対的に米国は余地が大きく、さらなる金利差縮小で、長期にわたって円高圧力がかかり続ける可能性がある。これらの米国発の問題について、日本としてできることは限られていると日銀幹部は頭を抱える。
<量的緩和も効果薄い、強まる手詰まり感>
円高がさらに進んだ場合、さらなる金融緩和に対する政治圧力が再び強まる可能性が大きい。追加緩和の選択肢としては、今回発表した新型オペの再拡充、長期国債買い切りオペの増額、時間軸の強化、政策金利の引き下げなど手段自体は残っている。ただ、金利が既にかなりの低水準にあるなか、日銀では、こうした措置の緩和効果は非常に限定的とみており、「残された手は為替介入くらいしかない」(幹部)との声もある。
当座預金残高をターゲットとした量的緩和への回帰も排除できないが「効果は薄いだろう」(幹部)とみている。足元の当預残高は17兆円程度と、量的緩和ピーク時の5─6割程度に相当するが、目立った効果はあがっていない。6月会合で概要が発表された成長基盤強化支援措置は「円高への耐性を高めることも大事な目的のひとつ」(幹部)だが、同措置で日本経済の潜在成長率を高め、デフレを脱却するには相当の時間が必要だ。
水野温氏・前日銀審議委員(クレディスイス・アジア太平洋地域副会長)も31日、ロイターとのインタビューで、円高対応に関し、「日銀が単独でできることは非常に限られている」との判断を示しており、手詰まり感も漂う。
<これまでの枠超えた新領域に踏み出すとの予想も>
こうした中で市場では、日銀が新たな領域に踏み出すとの見方も強まりつつある。モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミストは「期待インフレ率を高めるため、究極的には株式などのリスク資産や土地の購入もあり得る」と指摘。JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは「日銀が政府と組んで特別目的会社を設立し、外貨資産を購入するなどの案もある」としている。
日銀はこれまでも、世界の中央銀行に先駆けてゼロ金利政策や量的緩和といった未踏の政策に着手してきた実績を持つ。ある幹部は「今後も知恵をしぼっていく」と述べたが、今後も円高のたびに、効果の限定される追加緩和を繰り返すのか、これまでの政策の枠を超えた新たな領域を模索するのか、日銀は難しい判断を迫られつつある。
(ロイターニュース 児玉成夫記者;編集 石田仁志)
